福島原子力発電所の事故により大量の放射性セシウムが大気中に放出され、福島県を中心とした広範囲が汚染された。その結果、福島県の基幹産業である林業や農業等に大きく影響を与えている。本研究の目的は、林野庁や福島県の森林計画課が測定している福島県内多地点での放射性セシウムのデータを用いて広域的に解析することで、特定の地点だけではなく全体として放射性セシウムが樹種やそのほかの要因によってどのように移行するのかを解析するとともに、今後の放射性セシウムの動態の予測と林業や農業等での対策に必要な知見を収集することである。研究の結果、アカマツ材ではほぼ平衡状態に達していることが判明したが、スギやヒノキでは事故後8年以上が経過した現在でもセシウム１３７は辺材から心材へと移行し続けていることを確認できた。このように福島県全域として、樹種によってセシウム１３７の動態が異なることが明らかになり、今後も調査を継続する必要があることが分かった。