遮断蒸発現象は樹冠構造に大きな影響を受けると言われているが、樹冠構造が遮断損失量に与える影響に関しては未だ不明な点が多い。本研究では樹冠構造の変化が遮断損失量に与える影響を評価するため、人工降雨装置を用いて室内実験を行った。樹高約1mのレイランディーを対象木とし、単木における遮断損失量を測定した。遮断損失量は水収支法に基づいて計算する。剪定を行うことでPAIを変化させていき、複数の降雨強度でのPAIと遮断損失量の変動の相関を調べた。また、微気象要素(飽差、風速、正味放射量)の測定を行った。室内実験であったため風速は0であった。降雨実験を行った結果、0~7%の遮断率が観測できたが、PAIと遮断損失量の間で明確な相関は見られず、飽差と遮断率の間にも相関は見られなかった。風速が0であったため空気の攪乱が生じておらず、葉に貯留された雨滴がほぼ蒸発しなかったことが原因と考えられる。以上のことから、風速は樹冠遮断を考えるうえで重要な要素であり、飽差が存在するだけではPAIによる樹冠遮断への影響はほぼ見られないことが分かった。空気の攪乱が起きることで水蒸気移動が促進され、遮断が進行すると考えられる。