ミルクサイエンス
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原著論文
Lactobacillus reuteri由来Elongation factor Tuはブタ胃ムチンに対するHelicobacter pyloriの付着を阻害する
西山 啓太鏡谷 竹生山本 裕司岡田 信彦向井 孝夫
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2017 年 66 巻 1 号 p. 17-26

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抄録

 Helicobacter pyloriは,ヒトの胃に感染するグラム陰性のラセン状細菌であり,世界人口の約半数が感染している。プロバイオティクスには,宿主腸粘膜における病原細菌との付着部位の競合を介した感染阻害効果が知られている。筆者らは, Lactobacillus reuteri JCM1081の菌体表層由来Elongation factor Tu (EF-Tu) がH. pyloriの腸粘膜におけるレセプターの一つである硫酸化糖鎖に結合することを見出してきた。本論文では,組み換えEF-Tuタンパク質 (His-EF-Tu) を用いて H. pyloriの付着阻害の評価を目的とした。His-EF-Tuの添加は, H. pyloriのブタ胃ムチン (PGM) への付着を用量依存的に阻害した。また, H. pylori臨床分離株においても同様の阻害効果が確認された。興味深いことに,PGMのスルファターゼ処理も同様にH. pyloriの付着を減少させたが,一方で,スルファターゼ処理を行うとHis-EF-Tuによる阻害効果は,ほとんど確認されなかった。さらに,His-EF-Tuによる阻害効果は,硫酸化糖鎖に対するPGM34モノクローナル抗体の処理と同程度であった。ウエスタンブロッティングにより,4菌株のLactobacillusの菌体表層画分からEF-Tuが検出された。以上の結果から,我々は,EF-TuがH. pyloriのムチンへの付着を阻害することを証明すると共に,EF-TuとH. pyloriが同一の付着部位の競合を介して感染阻害が成立したと考えられた。

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© 2017 日本酪農科学会
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