ノンプロフィット・レビュー
Print ISSN : 1346-4116
研究論文
非営利組織の社会価値会計
―ソーシャル・アカウンティングによる見えない価値の顕在化―
馬場 英朗青木 孝弘木村 真樹
著者情報
ジャーナル フリー

2009 年 9 巻 1+2 号 p. 1-13

詳細
抄録

収支計算をベースとする従来の財務会計では,資金拠出者に対するアカウンタビリティを果たすに過ぎず,社会活動に取り組む非営利組織がミッションを果たしたことを適切に表すことができない.そのため,幅広い利害関係者に対する社会的アカウンタビリティを意識すべきであるが,多くのボランティアが参加して無償・低償サービスを提供する団体では,収支計算書に表れない社会価値を取り込まなければ正しい資源の投入量や成果の産出量を測定できない.そこで我々は,市場価格や代替費用の概念を用いてこれらの社会費用・便益を計算し,非営利組織が持つ見えない社会価値を顕在化させるソーシャル・アカウンティングの手法を検討した.さらに事例研究として,広く市民から出資金を集めて地域活動への融資に取り組むNPOバンク(コミュニティ・ユース・バンクmomo)の社会価値計算書を作成したところ,ボランティアによる役務提供や自己負担経費を含めれば,実際の支出額に対して5倍の資源が活動に投入されていることが判明した.今後,多様な活動分野に対するソーシャル・アカウンティングの活用方法や,合理的な市場価格の算定方法についてさらに検討を進めたい.

著者関連情報
© Japan NPO Research Association 2009
次の記事
feedback
Top