2017 年 55 巻 1 号 p. 18-28
1 .目的 本調査の目的は,小児における食の問題を明らかにし,それに対して歯科医師がなすべき役割を模索することである。
2 .方法 日本歯科医学会重点研究委員会推薦の幼稚園,保育園に通園している未就学児の保護者1,031 人を対象に,子どもの食の問題についてアンケート調査を行い,844 人からの回答を得た(回収率81.9%)。分析にはχ二乗検定およびロジスティック回帰分析を用いて,保護者の子どもに対する食事の心配事に関するリスク因子を評価した。
3 .結果 「離乳期にトラブルがあった」(Odds ratio[OR]=3.18, P<0.001),「子どもの食事量が足りない」(OR= 8.48,P<0.001)および「大人と同じ食べ物を与えていない」(OR=2.46, p=0.03,)という項目で,保護者の子どもの食に対する心配事のリスクが上昇した。
4 .考察 本研究結果より,保護者が感じている子どもの食の問題には背景因子があり,栄養に関わる食事量や,摂食嚥下機能の獲得に関わる摂取食事形態が関連していることがうかがわれた。歯科医師は,社会における育児支援の一環として食の問題に対応すべきであるが,そのためには育児,保育に関する知識や支援方法の習得が必要と考えられた。