農業用排水路の護岸に用いられる鋼矢板では,腐食実態の評価において板厚は指標のひとつに含まれる.本研究は鋼矢板の板厚の非接触検出につながるという位置付けの下,鋼材供試体における熱伝導の室内実験により,異なる板厚に起因して生じる温度変化量の相違について評価することを試みた.鋼矢板を模擬した板厚の異なる腐食鋼材の供試体と,背面土を模擬したガラスビーズとの2層による1次元熱伝導モデルにより伝熱現象の実験的検討を行った.熱伝導モデルによる解析の結果,熱流束の観点から,鋼材の板厚が薄いほど,その温度上昇に寄与する熱流束が単位幅あたりでより大きくなる傾向が確認された.これにより板厚が薄い鋼材ほど温度上昇はより大きくなり,板厚と温度変化量の間に負の相関を得る結果となった.