2022 年 63 巻 2 号 p. 89-93
症例は62歳男性。咽頭腫瘤を主訴に受診し,中咽頭腫瘤の生検からT細胞リンパ腫の診断。抗HTLV-1抗体陽性であり病理組織上リンパ腫型ATLが疑われたが,DNA検体の不足によりクローナリティ解析は未実施であった。末梢血に異型リンパ球が出現し,同細胞より抽出したDNAでHTLV-1プロウイルスDNAの組込み部位によるクローナリティ解析を施行したが,ポリクローナルパターンであった。そこで中咽頭生検組織のホルマリン固定検体でHTLV-1 bZIP factorを標的としたRNA in situ hybridization(HBZ-ISH)を行ったところ腫瘍細胞にHBZの高発現を認めたため,Tリンパ腫細胞におけるHTLV-1感染を確認しATLと診断した。ATLの確定診断には初発時主病変におけるクローナリティの証明が必須であるが,ホルマリン固定検体を用いたHBZ-ISHの有用性が示された。