2022 年 63 巻 7 号 p. 759-763
68歳男性。肺腺がんに対して免疫チェックポイント阻害薬(immune checkpoint inhibitor, ICI)を含む化学療法を施行中に多発肝腫瘤が出現し,傍大動脈リンパ節が直径2.0 cm,両鼠径リンパ節が直径1.5 cmまで増大した。ICIの再投与後,両鼠径リンパ節は直径2.0 cmまで増大したが,傍大動脈リンパ節と肝腫瘤は不変であった。右鼠径リンパ節生検より血管免疫芽球性T細胞リンパ腫(angioimmunoblastic T-cell lymphoma, AITL)の診断が得られた。リンパ節生検でAITL周囲のB細胞にEBER(EBV-encoded small RNA)が陽性であった。ICI中止後に鼠径リンパ節は直径1.5 cmまで自然縮小し,傍大動脈周囲リンパ節は不変,肝腫瘤は増大した。増大した病変は肺がんの転移である可能性が考えられた。本症例のAITLの発症機序にはICI投与とEBV再活性化の関与が推察される。また,methotrexate関連リンパ増殖性疾患と同様に,ICI休薬後腫瘍が自然縮小した可能性が考えられた。