2022 年 63 巻 7 号 p. 733-739
後天性凝固第V因子欠乏症は,後天的に第V因子に対するインヒビターが産生され,第V因子活性が低下することにより多彩な出血症状を呈する極めて稀な疾患である。我々は最近10年間で凝固検査の異常から後天性凝固第V因子欠乏症と診断した5例を経験した。5例すべてが高齢男性であり,1例は出血症状がなく,3例は腎不全と悪性腫瘍の既往を有していた。クロスミキシング試験では3例中2例がインヒビター型であったが,1例は欠乏型であった。いずれの症例もステロイド治療により第V因子活性およびPT・APTTの改善を認めたが,頭蓋内出血の合併例は予後不良であった。本疾患は極めて稀とされているが,出血症状がない例やクロスミキシング試験がインヒビター型でない例も存在することから,注意深く診療にあたる必要がある。