臨床血液
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Symposium 2
網羅的遺伝子解析による先天性溶血性貧血診断の意義と課題
菅野 仁小倉 浩美
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2021 年 62 巻 5 号 p. 472-479

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抄録

先天性溶血性貧血は,胎児期・新生児期から成人までのすべての年齢層で発症する疾患群である。過去5年間の病因が不明な溶血性貧血319症例を解析し,230例に病因を確定し得た。自己免疫性溶血性貧血と発作性夜間ヘモグロビン尿症が除外された溶血性貧血症例について,赤血球膜・酵素・ヘモグロビン検査を実施し,さらに病型を確定できない例の一部には68種の溶血性貧血関連遺伝子の遺伝子パネルを用いたターゲットキャプチャーシーケンシング(TCS)解析を実施した。TCS検査は赤血球輸血依存性の重症例,赤血球膜,酵素,ヘモグロビン解析結果から診断を確定できない非典型例の診断が可能であり,膜と酵素,膜とヘモグロビンの複合異常症例や先天性赤血球形成異常性貧血症例に対する診断における有用性が明らかになった。今後は病型確定のため,より簡単で迅速なスクリーニング検査の開発が不可欠と考えられる。

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© 2021 一般社団法人 日本血液学会
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