2021 年 62 巻 4 号 p. 251-256
65歳女性。高リスク骨髄異形成症候群に対して,HLA-DRB1アリル1座不一致のドナーから非血縁者間骨髄移植を行った。移植後day 237にアデノウイルス(adenovirus, ADV)出血性膀胱炎の発症と同時に,急性消化管GVHD(graft-versus-host disease)が再燃した。methylprednisolone(mPSL)2 mg/kgに増量,mesenchymal stem cellを投与し,GVHDは改善した。ステロイドを漸減中に高熱が持続し,肉眼的血尿の増悪がみられ,汎血球減少の進行,LDH,ferritin,肝胆道系酵素の上昇,骨髄検査では血球貪食症候群の発症が示唆された。Day 278の血漿ADV-DNA量が6.3×106 copies/mlに増加,髄液ADV-DNA量増加しており,播種性ADV感染症と診断した。Cidofovir 1 mg/kgをday 288から週3回,計8回投与した。また血球貪食症候群に対し,mPSL 2 mg/kgに再増量した。症状は改善し,day 369に血漿ADV-DNA量の陰性化がみられた。Cidofovirは重症ADV感染症に対して,有用であると考えられる。