2021 年 62 巻 10 号 p. 1510-1514
症例は75歳女性。肺腺がん術後再発に対する抗がん剤治療歴と特発性血小板減少性紫斑病(ITP)に対するHelicobacter pylori除菌治療歴がある。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対するBNT162b2 mRNA COVID-19ワクチン接種の2週間後に貧血を指摘され,血液・腫瘍内科を受診した。直接・間接クームス陽性の正球性正色素性貧血を認め,LDH・間接ビリルビン・網赤血球が高値であり,自己免疫性溶血性貧血(AIHA)と診断した。BNT162b2 mRNA COVID-19ワクチン接種の他には明らかな誘因を認めなかった。Prednisolone療法により速やかに病勢の改善が得られた。COVID-19の感染拡大抑制のためワクチン接種が非常に重要であると考えられているが,ワクチン接種の広がりとともにITPの発症・増悪が報告されている。一方でAIHAの報告は希少である。今後のワクチン接種事業の進展に際しAIHAの発症についても注意すべきと考えられた。