2021 年 62 巻 8 号 p. 1029-1037
がんにおける遺伝子解析の進歩は目覚ましく,格段に分子病態の理解が深まっている。腫瘍性疾患の解明として体細胞変異,すなわち,がん細胞における遺伝子解析が腫瘍の診断に貢献し,さらに予後予測や治療標的として重要になった。一方で遺伝性疾患の原因として生殖細胞系列変異が同定され,症状診断が中心だったものが,遺伝子情報が確定診断に大きく貢献している。造血器腫瘍では,WHO分類の2016年改訂において生殖細胞系列の素因を有する骨髄系腫瘍の項が新しく提唱された。骨髄系腫瘍のみならず,リンパ系腫瘍,固形腫瘍の発症を特徴とする遺伝性素因もある。2016年以降もSAMD9/9L変異をはじめとして,新たな知見が加わっており,代表的疾患を概説する。