2019 年 60 巻 3 号 p. 213-217
異常ヘモグロビンはこれまでに世界で1,200種類以上,日本でも200種類以上が確認されており,約3,000人に1人の疾患率といわれている。ほとんどが無症状であるが,中には溶血性貧血やチアノーゼを呈する例もある。症例は49歳女性。感冒症状のあとに遷延する易疲労感と間欠的な褐色尿を自覚し当院を受診したところ,軽度の溶血性貧血の所見を認めた。パルスオキシメーターでSpO2 93%,動脈血液ガス分析ではpO2 85 mmHg,sO2 96%とSpO2との解離を認め,HbA1c 3.7%と異常低値を示していた。異常ヘモグロビン症を疑い遺伝子精査を施行したところ,“Hb Hirosaki”であることが判明した。異常ヘモグロビン症の中には原因不明の溶血性貧血として治療される例もあり,診断は容易ではないことが多いが,詳細な問診やSpO2低下,HbA1cの異常などの簡便なスクリーニングが診断に有用である。