2019 年 60 巻 1 号 p. 17-21
症例は63歳女性,急性骨髄性白血病再発のため当院入院となった。再寛解導入療法開始後day10に発熱を認め,day15のCTで右上葉に浸潤影を認めた。真菌マーカー陰性でvoriconazole投与中のためムーコル症を疑い,Liposomal amphotericin Bに変更,非寛解で非血縁者間同種骨髄移植を施行した。Day1に右肩痛,day3に肺炎増悪を認め,day15に右下肢麻痺,day16に両下肢の麻痺と感覚消失を認めた。造影MRIでTh11の脊椎腹側にT2高信号域を認め,横断性脊髄炎と診断した。抗ウイルス剤を投与するも生着後のday24に肺炎のため死亡した。病理解剖で,肺・肝臓・横隔膜・血管・脊髄硬膜にムーコルを認め,急激な下肢麻痺の原因は播種性ムーコル症であった。遷延する好中球減少患者で,発熱・疼痛に加え局在性神経学的所見を呈した場合,播種性ムーコル症を疑う必要がある。