臨床血液
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Symposium 6
緊急時好中球造血に必須の転写因子C/EBPβによる造血幹細胞の分化増殖制御
平位 秀世
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2018 年 59 巻 6 号 p. 798-804

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抄録

感染,炎症のみならず化学療法や骨髄移植後の造血回復において,造血システムは,骨髄球系細胞を中心とした需要に応えようとする。このようなストレス負荷時には,定常状態とは異なる造血制御機構が働いており,その理解は臨床的にも重要な課題である。C/EBPβは,緊急時好中球造血において重要な役割を担う転写因子であり,最近になってその作用点が造血幹・前駆細胞レベルであることが判明した。さらに,ストレス負荷によって造血幹細胞内でC/EBPβのタンパク質レベルでの発現が亢進すること,C/EBPβノックアウトマウスの解析から,C/EBPβはストレス負荷後の造血幹細胞の増殖・分化を促進する一方で,枯渇を誘導する方向に作用することが明らかとなった。今後,C/EBPβの発現制御や造血幹細胞の増殖・分化制御における機能を解析することによって,ストレス造血やそれをもたらす病態の分子機構が明らかになることが期待される。

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© 2018 一般社団法人 日本血液学会
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