2018 年 59 巻 10 号 p. 1955-1961
生涯を通じて自己複製能と多分化能を維持する造血幹細胞は恒常的には骨髄において非常にゆっくりと細胞分裂を繰り返す。一方,感染,炎症などの造血ストレスが生じる場合には,末梢組織での細胞消費に応じた骨髄造血が必要になるため,造血幹細胞も動員した組織だった造血活性化が起こることが予想される。近年,感染に起因した炎症反応がいかにして骨髄内で造血を司る造血幹細胞や造血前駆細胞に作用し,生体防御を目指した造血制御を行うのかについて多くの知見が蓄積してきた。これらの最新知見を紹介しながら,これまで免疫特権臓器の一つと考えられた骨髄で造血細胞のみならずニッチ細胞も巻き込んだ多種多様な炎症反応が繰り広げられているかについて議論する。