2017 年 58 巻 8 号 p. 933-937
先天性血栓性血小板減少性紫斑病(先天性TTP)はvon Willebrand因子を特異的に切断する酵素であるADAMTS13の先天的な活性低下により発症する血小板減少症と溶血性貧血を主徴とする疾患である。小児期には臨床症状は軽症で進行も緩徐な例が多く,血小板減少のみを呈する症例では見逃されることも多い。先天性TTPの兄弟例を経験したので報告する。11歳男児がインフルエンザ感染を契機に血小板減少をきたし受診した。患児は重症新生児黄疸の既往があり,先天性TTPを疑い精査を行ったところADAMTS13活性低下,インヒビター陰性であった。幼児期から血小板減少を繰り返していた15歳の兄にも同様の所見を認め,遺伝子検査により兄弟共に先天性TTPと確定診断した。先天性TTPは小児の血小板減少症の鑑別として重要であり,原因不明の血小板減少の際にはADAMTS13活性測定が有用である。