2017 年 58 巻 6 号 p. 676-682
成人T細胞白血病・リンパ腫(ATL)はヒトTリンパ球向性ウイルスI型(HTLV-1)によって引き起こされる予後不良な末梢性T細胞腫瘍である。主として母乳によって成立したHTLV-1感染者の3~5%がATLを発症する。現在の本邦の標準治療は,aggressive ATL(急性型,リンパ腫型と予後不良因子を有する慢性型)に対しては多剤併用化学療法,さらに可能な症例では同種造血幹細胞移植を実施すること,indolent ATL(くすぶり型と予後不良因子のない慢性型)に対してはaggressive ATLとなるまで無治療経過観察することである。近年はATL細胞の表面抗原を標的とする抗体療法,ATL細胞の分子異常を標的とする治療,免疫環境を修飾する治療の開発が試みられており,そのうち抗CCR4抗体モガムリズマブと,免疫調整薬レナリドミドはすでに日常臨床に導入されている。