2015 年 56 巻 3 号 p. 312-316
遺伝子組み換え型ヒトトロンボモジュリン製剤(rTM)は,播種性血管内凝固(DIC)に対する原疾患の治療との併用において有用である。DICの基礎疾患として,血液腫瘍,敗血症,固形がんなどでその効果が検証されており,既存の抗DIC薬と同等の効果が示されている。しかし,血球貪食症候群(HPS)に合併したDICに対する治療効果については不明である。今回我々は,rTMの併用によりDICを合併したHPSにおいて良好な病勢コントロールを得たため報告する。症例の基礎疾患はNK/T細胞リンパ腫鼻型,血管免疫芽球性T細胞性リンパ腫,臍帯血移植を施行した急性骨髄性白血病の3例であった。これらのHPS合併例はいずれも難治性が予測されたにも関わらず,速やかに血液凝固異常と炎症反応が是正され,HPSの病勢を示す血清乳酸脱水素酵素,フェリチンの著明な改善を見ており,基礎疾患に対する治療との高い相乗効果が推察された。今後DICを合併したHPSに対する併用薬として,rTMは優れた効果が期待される。