2015 年 56 巻 1 号 p. 16-20
症例は75歳男性。18年前に進行胃がんに対して胃亜全摘術を行い,再発なく経過していた。健康診断で貧血を指摘され,当科を受診。無症状で,ビタミンB12と鉄の低下がみられたため補充を開始した。しかし,血清ALPが高値のため悪性腫瘍の骨転移を疑い精査したところ,上部消化管内視鏡検査で残胃がんを疑う所見を認め,同部からの生検の結果signet ring cell carcinomaと診断した。一方,骨髄検査でも胃生検と同様の組織所見を認めた。FDG-PET/CT検査で残胃と骨の他にFDGの集積を認めず,残胃がん骨転移,播種性骨髄癌腫症と診断した。その後,急速に血球減少が進行し,播種性血管内凝固症候群を併発して死亡した。胃がん手術歴のある患者で,血清ALPの上昇を認める場合は,無症状でも本症を疑い,速やかに骨髄検査や画像検査を行う必要があると考えられた。