2017 年 114 巻 9 号 p. 1639-1648
完全静脈栄養(TPN)を行った当科の炎症性腸疾患(IBD)137例を対象に,ブラッドアクセスとして従来型の中心静脈カテーテル(CVC)を選択した56例と,末梢挿入型中心静脈カテーテル(PICC)を選択した81例の臨床経過を,後ろ向きに調査した.穿刺時合併症はCVCで気胸を2例(3.6%)認めたが,PICCでは認めなかった.PICCはCVCに比し,目的達成抜去率が有意に高く,カテーテル関連血流感染(CRBSI)発生率が有意に低く,CRBSI発生までの期間も有意に長かった.本研究は単施設・後ろ向きの検討だが,IBD患者に対しPICCはCVCに比して安全性が高く,TPNをより計画的に完遂できる可能性が高い.