日本調理科学会誌
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郷土料理に対する富山大学学生の意識調査
石川 尚子北村 由紀子加藤 征江
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2003 年 36 巻 4 号 p. 421-430

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抄録

富山大学の学生を対象に,郷土料理に対する意識調査を実施した結果,以下のことが明らかになった.
1.家庭における郷土料理の有無については,男子約23%,女子約36%が「あり」と回答している.家族形態では拡大家族に「あり」が多く,祖父母・父母から,また,行事を通して郷土料理が伝承される傾向がみられ,伝承の方法にひとつの示唆を与えている.
2.「郷土料理は伝えて行くべき」と回答した男子は約90%,女子は約97%で,その理由として約40%の学生が「食文化を守ることは大切」と考えている.
3.郷土料理についてのイメージとしては,「健康的」「おいしさ」が高い評価を得ている.しかし,「おいしさ」については疑問をもつものもあり,どのようにアレンジしながら「おいしい郷土料理」を伝承させていくかが今後の課題となろう.
4.「ほたるいか,たら,白えび,ばい貝,寒ぶり,五箇山豆腐」などの食材を使った郷土料理については,「白えび,寒ぶり」の料理に対して「非常に好き」「好き」の合計は男女とも70%以.ヒを超え,他県出身者にも好感をもたれている.しかし,五箇山豆腐のようにあまり受け入れられていない食材および料理もあった.
以上,今回の意識調査を通して,若い世代の郷土料理に対する意識・関心は比較的高く,家庭での伝承も良好である実態が認められた.しかし,富山・石川県出身者でも食べた経験がない富山・石川の郷土料理があったり,他県出身者が富山の食文化に無関心であったりして,必ずしも郷土料理が生活の中に根づいていない実態も明らかになった.郷土料理の情報源が祖父母・父母,マスメディア・地域の人であることを鑑みれば,家庭・地域に対する郷土料理に関する情報の提供や学校教育での教材化等,さまざまな機会をとらえてのアプローチが必要になるのではないかと考える.
郷土料理はこれまでも,入手できる食材,家族構成,社会・経済・文化の状態などに柔軟に対応しつつ今日まで伝承されてきている.調査結果を踏まえて今後の方向を考えると,「おいしさ」「健康的」をキーワードに,食材・味付けおよび作り方等を少しずつ変化させて,次代へ伝えられていくであろうと思われる.
最後に,アンケートにご協力いただいた富山大学の学生に謝意を表し,この研究が日本調理科学会平成13年度大会で口頭発表したものであることを申し添える.

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