2018 年 27 巻 4 号 p. 333-336
膝窩動脈損傷は,骨傷や脱臼との関連が指摘されており,本邦ではこれまで143例の症例報告がなされている.その中でも鈍的外傷により骨傷や脱臼を伴わない膝窩動脈損傷の報告例は15例であり稀である.症例は47歳,男性,就業中に下肢を挟まれ受傷した.右大腿から膝窩にかけて疼痛と圧痛を認めたが,明らかな膝関節脱臼,靭帯損傷,骨傷は認められなかった.膝窩動脈以下の動脈拍動は触知せず,造影CT検査にて膝窩動脈の高度狭窄を認めたため,自家静脈によるバイパス術を行い良好な結果が得られた.膝関節脱臼,靭帯損傷,骨傷を伴わない鈍的下肢外傷の症例でも動脈損傷をきたすことがあり注意が必要である.