環境科学会誌
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シンポジウム論文
バイオマス・ネットワーク設計ソフトウェア “AB-NET”の開発
橘 隆一熱田 洋一ウィディヤント アヌグラ蒲原 弘継後藤 尚弘荒川 正幹船津 公人藤江 幸一
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2009 年 22 巻 4 号 p. 257-269

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抄録

熱帯プランテーション地域におけるバイオマス利活用を評価するソフトウェアとして,資源作物の栽培プランテーション,作物の加工工場,地域における消費,国際貿易を考慮した各工程間の輸送まで,一連のデータの入力と,グラフ表示等による多角的な分析が可能であるAsia Biomass Network Model(AB-NET)を開発した。AB-NETは次の四つのサブモデルから構成される。
a) Plantation model; 土壌条件,化学肥料施肥量などのデータをもとに,プランテーションにおける作物の収量,環境負荷量,コストを推計する。
b) Agro-industry model; 作物の抽出・加工工場における物質・エネルギー収支を評価する。残バイオマスの発生量やバイオマス発電で得られるエネルギー量などを推計する。
c) Region model; Plantation modelとAgro-industry modelからの情報をもとに,対象地域でのバイオマス利活用による環境負荷削減量やエネルギー代替可能量などを評価する。
d) International transportation model; 作物栽培プランテーション,作物加工,バイオマス燃料製造,国際輸送,日本における消費までの各工程におけるエネルギー収支および環境負荷を積み上げて,輸入バイオマス燃料の環境負荷量,コストなど,総合的に評価する。
いくつかの使用例を検討したところ,地場のバイオマスを利活用することによる自立型地域システムの創生に向けた検討や,熱帯プランテーションで生産されるバイオ燃料について,例えば,我が国に輸入する場合を想定した生産・輸送に伴うエネルギー消費,温室効果ガス排出量等も予測可能であることが確認された。

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© 2009 社団法人 環境科学会
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