2021 年 36 巻 4 号 p. 545-551
目的:人間ドック受診者における好酸球性食道炎(Eosinophilic esophagitis: EoE)の臨床像を明らかにすることを目的とした.
方法:2015年4月~2020年10月の人間ドック受診者延べ33,877人を対象としEoEと診断したEoE群と,年齢・性別を合わせて無作為に抽出した対照群で検討を行った.標準的な健診項目と上部消化管内視鏡所見について単変量解析し,p値が0.1未満の因子に対して多変量解析した.またEoE群でEoEに特徴的な内視鏡所見についての検討も行った.
結果:20,145例の解析を行いEoEの発見率は0.47%であった.単変量解析ではEoE群に飲酒歴・つかえ感や胸やけ症状・アレルギー歴があることが有意に多く,内視鏡所見と他の健診項目については有意差を認めなかった.多変量解析の結果,飲酒歴・つかえ感や胸やけ症状・アレルギー歴があること・内視鏡所見でバレット食道がないことがEoEの独立した危険因子であることが明らかになった.EoEに特徴的な内視鏡所見のなかでは縦走溝が93%と最も多く認められた.
結論:アレルギー疾患の既往,つかえ感や胸やけ症状,飲酒歴があり,内視鏡所見でバレット食道を認めない受診者には,EoEである可能性を考え特徴的な内視鏡所見を探したうえで積極的に食道粘膜の好酸球数を評価することが人間ドックでのEoEの発見率向上のために重要であると考えられた.