日本物理学会誌
Online ISSN : 2423-8872
Print ISSN : 0029-0181
ISSN-L : 0029-0181
水の物性と地球のダイナミクス : 地球内部のかたい水と地震の発生?(科学は今)
中嶋 悟
著者情報
ジャーナル フリー

2002 年 57 巻 10 号 p. 746-753

詳細
抄録

地球浅部物質(地殻岩石)中の水の顕微赤外分光測定から,地殻の水は主に結晶粒界に存在し,また狭い結晶粒界薄膜水は「かたい」ことが示唆された.地殻深部で温度上昇に伴い結晶粒径が増大するにつれ,含水量,粒界の幅が減少すると,孤立した「かたい」結晶粒界薄膜水が卓越し,粘性が高く水が流れにくくなり,地震発生につながる可能性がある.また,このような水の「かたさ」は溶存成分によっても大きく異なり,NaClやCO2濃度といった流体の化学が地球のダイナミクスを支配している可能性がある.ここでは従来マクロな力学過程からとらえられてきた地球のダイナミクスを,水の構造や物理化学的性質といったミクロな視点からとらえ直す.

著者関連情報
© 社団法人 日本物理学会
前の記事 次の記事
feedback
Top