日本食品工学会誌
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食品微生物の膜分離に関する研究
田中 孝明
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2007 年 8 巻 4 号 p. 221-229

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抄録

本総説では, 食品・バイオ産業における微生物の膜分離における特徴と問題点, および, 問題点の解決のためのクロスフロー濾過法と生分解性濾過膜の開発について解説した.微生物の膜分離においては膜面上に圧縮性の高い濾過ケークが堆積するため, 濾過の進行とともに濾過速度 (透過流束) が低下する.現在はケーク濾過抵抗を低下させるために珪藻土などの濾過助剤を用いる助剤濾過が主流であるが, 難分解性の濾過助剤を含む濾過残渣が副生するという問題点がある.濾過助剤を用いないクロスフロー濾過法は濾過膜に平行な流れにより濾過ケークの形成を抑制し, 高い透過流束を得る方法である.クロスフロー濾過法を用いると酵母などの球菌の懸濁液においては高い透過流束が得られるが, 棒状の桿菌や培地に微粒子成分・高分子成分を含む場合には濾過ケークの構造変化や二次的な粒子層・ゲル層の形成により透過流束が低下する.このような場合に行われる逆洗法などの透過流束の回復法について述べた.さらに, デッドエンド型濾過についても廃棄物を削減するために, 最近, 著者らが取り組んでいる生分解性ポリエステル製濾過膜の開発についても解説した.

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