2007 年 39 巻 11 号 p. 992-996
症例は32歳,男性.特記すべき既往や家族歴はない.3年前より冷水を嚥下中に眩暈を伴う動悸を自覚することがあった.誘因なく動悸が頻回に出現するようになり精査のため前医に入院した.心電図では発作性心房細動のほか,自然停止する多形性心室頻拍(polymorphic ventricular tachycardia;PVT)が頻発し,リドカイン静注でPVTは消失した.その後精査加療のため本院に転院した.12誘導心電図では下壁誘導にJ波を伴うST上昇を認めた.心エコー,冠動脈造影,心筋SPECTでは異常なく,運動負荷試験で立位時にV2,V3誘導のSTが上昇し1肋間上げたV2誘導でcoved型ST上昇を認めた.ST上昇は運動時に軽減,運動後に増強しBrugada症候群と診断した.本例では前胸部誘導でも潜在的なST上昇が認められ,また,前医でみられた多形性心室頻拍は初期数拍から最大15拍目まで同一パターンを示していた.この症例に特異的な再分極の空間的不均一性が存在することが示唆され,稀な症例であると考えられたため報告する.