心臓
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症例 急性心筋梗塞をきたした器質的冠狭窄のない閉塞性肥大型心筋症の2例
伊藤 正洋広野 暁佐伯 牧彦大和田 真紀子北沢 仁佐藤 政仁岡部 正明小玉 誠相澤 義房
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1999 年 31 巻 8 号 p. 601-606

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抄録

急性心筋梗塞をきたした器質的冠狭窄のない閉塞性肥大型心筋症の2例を経験した.症例1は68歳の男性で,胸部圧迫感出現2時間30分後に来院.心電図は190/分の単形性持続性心室頻拍であり,血圧は触診で80mmHgであった.プロカインアミドの使用で症状出現より3時間30分後,洞調律に回復したが,その後CPKの上昇を認めた.症例2は68歳の男性で,出血性胃潰瘍で入院中に再出血を認め,ショック状態となった.その後引き続きCPKの上昇,Q波の出現を認めた.2例とも心臓エコー検査で心室壁の肥厚を認めたが,壁運動は低下しておらず,ピロリン酸心筋シンチグラフィでは心内膜下への全周性の集積を認めた.心臓カテーテル検査では,2例とも冠動脈に有意狭窄を認めなかった.左室造影は,症例1では心室中部閉塞と心尖部の心室瘤を認め,心室中部で120mmHgの圧較差を認めた.症例2は壁運動は正常であり,左室流出路で86mmHgの圧較差を認めた.肥大型心筋症では,左室内閉塞の存在下に頻拍やショックによる血行動態の悪化が加わることにより,心筋梗塞を発症することがあり,注意を要すると考えられた.

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