日本公衆衛生雑誌
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原著
女性介護者における心身の健康的特性
星野 純子堀 容子近藤 高明前川 厚子玉腰 浩司榊原 久孝
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2009 年 56 巻 2 号 p. 75-86

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抄録

目的 本邦では,血液や尿など生体学的指標を用い女性介護者の身体の状態や身体的疾患を検討した研究はみあたらない。本研究は,生体学的指標と自記式質問紙を用い,一般住民健診受診者との比較から女性介護者における心身の健康的特性を明らかにすることを目的とした。
方法 対象は,在宅で要介護 3 相当以上もしくは要介護 3 未満でも認知症の者を介護している女性介護者161人(介護者群)である。対照群は,対象の性と10歳階級ごとの年齢を 1:1 対応でマッチングさせた K 市の一般住民健診を受診した者である。調査期間は,2005年12月から2007年 4 月であった。調査方法は,介護者の生活習慣,介護状況,ピッツバーグ睡眠質問票日本語版(PSQI),食物摂取頻度などに関する自記式質問紙調査と訓練を受けた調査員が被験者宅を訪問して実施する主に生活習慣病に関する生化学的検査や血圧などの測定であった。
結果 介護者群の平均年齢は62.8±11.9歳で,対照群の平均年齢は63.2±12.4歳であった。介護者は,介護期間が 5 年以上の者が46.0%と多く,1 年未満の者は8.7%と少なかった。要介護者の要介護度は要介護 5 が33.8%と多かった。介護者群の高血圧有病率は46.0%,対照群は34.2%であり,介護者群で有意に高い割合を示した。耐糖能異常,低 HDL コレステロール血症の有病率は,介護者群において高い割合を示すものの有意な差はみられなかった。HDL-コレステロールは介護者群において有意に低い平均値を示した。生活習慣に関しては,質問紙調査から運動,PSQI 得点,栄養比率の炭水化物エネルギー比において両群で有意な差がみられた。生体学的指標を用いた24時間尿中ナトリウム(Na)排泄量推定値も両群で有意な差がみられ,介護者群において高い平均値を示した。また,介護者群は主観的に健康でないと答える者が多いものの,毎年健康診査を受診する者は対照群と比較し少なかった。さらに,介護者群は健康・老後に関するストレスや抑うつ感のある者が多く,気晴らしをすることが少ないことが明らかとなった。
結論 女性介護者は,高血圧の有病率が高いことが明らかとなり,高血圧の対策が必要であることが示唆された。また,生体学的指標も用い検討しても望ましくない項目があることや健康・老後に関するストレス,抑うつ感のある者も多いため,健康支援が必要であると思われた。

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© 2009 日本公衆衛生学会
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