日本公衆衛生雑誌
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独居虚弱高齢者における介護予防事業対象者把握の検討 地域看護職の判断と国の基本チェックリストとの比較
河野 あゆみ板東 彩津村 智惠子串山 京子元重 あき子今木 雅英
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2008 年 55 巻 2 号 p. 83-92

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抄録

目的 本研究では,ある地域で介護認定を受けていない独居高齢者を対象とした悉皆調査を行い,介護予防事業対象者把握における基本チェックリストと地域看護職の判断との内容を比較検討することである。
方法 一次調査は郵送にて,総合的移動能力と厚生労働省による基本チェックリストについて調査した。二次調査では,地域看護職による訪問面接を行い,介護予防支援の必要性を判断した。
 住民基本台帳による A 町全独居高齢者のうち介護認定を受けていない677人に一次調査を行った結果,501人の質問紙が返送された。一次調査から非独居者,要介護認定者,交通機関を使って外出可能な者を除外し,110人を二次調査対象とし,そのうち,二次調査時に拒否,死亡,転居,不在,要介護認定者,介護認定申請が必要であった者等を除外した79人を分析対象とした。
結果 看護職の判断による介護予防事業対象者は33人(40.7%)であり,基本チェックリストによる介護予防事業対象者は12人(15.2%)であった。
 看護職の判断と基本チェックリストによる介護予防事業対象者の割合におけるカッパ係数は0.17であり,両者間の一致率は低かった。看護職による判断の介護予防事業対象者の支援内容で多かったものは,運動器の向上(66.7%),うつ予防(42.4%),閉じこもり予防(39.4%)であり,基本チェックリストでは口腔機能改善(50.0%)と栄養改善(41.2%)であった。基本チェックリストにて,口腔ケアや栄養改善が必要とされていた者は,看護職の判断ではこれらの支援が必要とされていなかった。3 種類以上の支援内容が必要とされていた者は,看護職の判断では,24.2%みられていたのに対し,基本チェックリストでは,全くみられなかった。
結論 独居虚弱高齢者において介護予防事業対象者を把握する際に,基本チェックリストでは看護職が判断する介護予防事業対象者を見逃す可能性が示された。一方,栄養改善や口腔ケアの必要な対象者を看護職は見落としやすいと考えられ,今後これらに関するアセスメント内容を改善することが必要と考えられた。また,基本チェックリストと看護職の判断では必要とされる支援内容が異なることが明らかにされた。

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© 2008 日本公衆衛生学会
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