日本公衆衛生雑誌
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保健所の特定給食施設指導を活用した勤労者の減塩の試み:埼玉県川越市内事業所での事例
佐藤 麻記子坂口 景子武見 ゆかり丸山 浩
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論文ID: 23-101

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抄録

目的 働き盛り世代の高血圧予防アプローチとして,川越市保健所では,特定給食施設指導を活用した減塩への意識改善と実践を促す事業を実施することとした。本報告は,管内事業所を対象に減塩に焦点を当てた社員食堂の食環境整備を推進し,その影響を従業員の尿中ナトリウム測定等により評価した取組の報告である。

方法 埼玉県川越市内にある従業員数約270人のA事業所を対象とした。参加者は同意が得られた214人(約8割)であった。実施期間は2019年11月~2021年11月であった。高血圧者の減少を長期的な目標とし,本取組のアウトカムを,食塩摂取量の減少,尿中ナトリウム/カリウム比の低下,血圧の改善とした。その達成に必要な活動として,減塩に焦点を当てた社員食堂の改善(健康的でバランスのとれたスマートミール®の提供,全メニューの食塩相当量低減等)を行った。活動のアウトプットには,社員食堂の提供メニューの減塩,社員食堂の利用頻度の向上,社員食堂に対する主観的評価の向上,日頃の減塩意識の向上を位置付けた。評価時期は,3年間の社内定期健診時とし,尿検査,血圧測定(アウトカム),質問紙調査(アウトプット)を用いた。提供メニューの食塩相当量は,毎月,給食受託会社からデータの提供を受け把握した。

活動結果 2019~2021年のデータに不備のない102人を解析対象とした。スポット尿による推定食塩摂取量(g/日)は,2019年の10.3±2.1から2020年9.8±2.4,2021年9.5±2.0と減少した(P=0.003)。収縮期血圧(mmHg)は,2019年の114.7±12.5から2020年111.7±12.1,2021年110.6±12.0と低下した(P=0.010)。社員食堂の提供メニュー別食塩相当量の変化は,定食A(P<0.001),定食B(P<0.001),カレー(P<0.001),麺(P<0.001)いずれも,2019年に比べ2020年と2021年の食塩相当量が減少した。

結論 スマートミール®の導入と全メニューの減塩等の社員食堂の食環境整備を行った。1年後と2年後に従業員の食塩摂取量の低減,血圧値(収縮期,拡張期)の低下が認められた。2024年度より開始される国民健康づくり運動「健康日本21(第三次)」の推進に向けて,保健所等自治体の食環境整備の実践に役立つ示唆が得られた。

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