日本公衆衛生雑誌
Online ISSN : 2187-8986
Print ISSN : 0546-1766
ISSN-L : 0546-1766
原著
妊娠期の関わりと産後の地域専門職への信頼と援助要請先の認知:JACSIS妊産婦データ2020-2021を用いた検証
松島 みどり髙木 彩近藤 尚己田淵 貴大
著者情報
ジャーナル フリー

2024 年 71 巻 2 号 p. 93-102

詳細
抄録

目的 本研究は,妊娠・出産包括支援事業の一部である妊娠期の専門職面談や支援プラン作成が,産後の地域専門職への信頼と,援助要請先の認知に与える影響を定量的に明らかにすることを目的としている。

方法 2021年7~8月,2022年1~2月に同一の対象者にweb調査を行った。対象者は,2021年調査時は妊娠中,2022年は産後0~5か月の女性である。調査項目は基本属性,就業状況,妊娠・出産関連項目に加えて,母子健康手帳交付時の相談機会,妊娠期間中の支援プランの作成,地域専門職への信頼と援助要請先の認知である。まず,これらの回答を用いて,地域専門職への信頼と援助要請先の認知を従属変数とし,妊娠期の相談機会,支援プラン作成の有無を目的変数としてロジスティック回帰分析を行った。次に,子育て世代包括支援センターの設置の有無,居住自治体の財政力指数,1人当たり児童福祉費,母子健康包括支援センター保健師数を分析モデルに加えることで,妊産婦向け支援全般の充実度を調整した上でも,妊娠期から地域専門職が関わる取り組みの効果として,分析結果が頑健であるかを確認した。

結果 日本全国から回答を得て,616人を分析対象とした。記述統計からそれぞれの回答の割合は,相談機会有74.0%,支援プラン作成有23.7%,地域専門職への信頼有69.8%,援助要請先の認知有63.6%であった。ロジスティック回帰分析の結果,相談機会があった,支援プランを作成したと回答した人の出産後の地域専門職への信頼と援助要請先の認知はそうでない人に比べて高かった(地域専門職への信頼に対して,相談機会有の場合のオッズ比:2.05 95%信頼区間:1.37-3.07/支援プラン作成有の場合のオッズ比:2.25 95%信頼区間:1.41-3.60。援助要請先の認知に対して,相談機会有の場合のオッズ比:1.46 95%信頼区間:0.98-2.16/支援プラン作成有の場合のオッズ比:3.05 95%信頼区間:1.94-4.80)。なお,これらは自治体財政や妊産婦向け支援全般の充実度を調整した上でも同様の結果が得られた。

結論 妊娠期の相談機会や支援プラン作成は産後の地域専門職への信頼と援助要請先の認知を向上させていた。自治体財政や妊産婦・子育て支援全般の充実度についてはこれらの関係はみられず,妊娠期の専門職との関わりの重要性が示唆される。

著者関連情報
© 2024 日本公衆衛生学会
次の記事
feedback
Top