日本公衆衛生雑誌
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原著
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)第6波:小児の疫学調査
森元 真梨子田中 昌子堀 忍四方 哲
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2023 年 70 巻 11 号 p. 749-758

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抄録

目的 COVID-19流行当初,小児の感染者数は大人に比較して少なく,家族内感染,無症状がほとんどで,重症化も稀とされていた。感染力の強いオミクロン株に置き換わった2021年12月からの国内第6波では,小児の感染者数が急増し,社会機能や病院機能の維持に大きな影響を与え,少数ながら国内で死亡例が出たことで,保護者の不安が高まった。しかし,一般の小児を対象にしたオミクロン株の累積罹患率,重症化率,入院率等の疫学的特性を明らかにした文献はない。今回,第6波における小児陽性者の疫学的特性を明らかにするため検討を行った。

方法 2022年1月15日から5月31日の期間に,京都府山城北保健所に発生届が提出されたCOVID-19陽性者(みなし陽性を含む)28,086人を対象とした。発生届,積極的疫学調査等に基づき,当保健所および京都府で作成したデータベースを元に,累積罹患率,入院率等について,15歳未満(小児)とそれ以上の年齢群で比較した。また,療養中に入院した小児陽性者24例を対象に,積極的疫学調査書に加え,感染症法に基づき,入院施設から保健所に報告された健康観察,退院報告を基に,症例背景,入院期間,臨床症状等について後方視的に検討した。

結果 管内の小児人口52,897人(15歳未満人口比率12.3%)に対し,陽性者数は7,980人で,陽性者に占める小児の割合は28.4%,累積罹患率は15.1%であった。小児陽性者における入院者数は24人で,陽性者の0.3%,小児人口の0.04%であった。一方,15歳以上人口377,093人における陽性者数は20,106人であり,累積罹患率は5.3%であった。入院者数は1,088人で,陽性者の5.4%,15歳以上人口の0.28%であった。入院した小児24例の新型コロナウイルス感染症診療の手引きにおける重症度は,軽症22例(91.6%),中等症Ⅱ2例(8.3%)であり重症はなかった。2例(8.3%)はCOVID-19以外の疾患の治療目的で入院した。入院期間は中央値3.5日であり,20例(83.3%)が陽性のまま退院し,自宅療養へ移行した。

結論 第6波における小児の累積罹患率は15.1%であり,それ以上の年齢層に比べて約3倍高かったが,小児の重症例は認めなかった。

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