2003 年 23 巻 6 号 p. 905-909
膵頭十二指腸切除術後の動脈破綻による二度の腹腔内大量出血に対し, 開腹止血術で救命し得た症例を経験した. 患者は59歳, 男性. 精査にて, 十二指腸浸潤を認める膵頭部癌と診断, 膵頭十二指腸切除術を施行した. 術後は順調に経過していたが16日目に腹腔内出血によるショック状態を呈したため, 緊急開腹術を施行した. 初回手術時に誤って損傷した総肝動脈が出血点であり, これを縫合止血した. しかし, この手術後11日目に再び出血, 動脈塞栓療法が不成功であったため再度の緊急開腹術を施行した. 出血部位は前回と同部位であったが, 血管壁脆弱のため縫合修復不可能であり, やむを得ず刺入結紮を行い止血した. 術後, 軽度の肝機能障害を認めたが比較的速やかに軽快し, 初回手術後から88日目に退院となった. 膵切除術後の腹腔内出血に対し二度にわたる開腹止血術で救命し得た例はまれと考えられた.