2017 年 34 巻 2 号 p. 98-101
気管内腔までの浸潤を伴う甲状腺癌は稀ではあるが,血痰,喀血,呼吸困難などの症状を伴って患者を死に至らしめる重篤な病態である。症例の絶対数が少ないので,切除範囲に対する考え方,気管再建法,周術期管理などについて臨床試験を行うことはほぼ不可能で,比較的症例数が多い施設からの報告があるのみである。ここでは当科における甲状腺癌気管浸潤例に対する気管合併切除および再建の経験を踏まえて,特に膜様部温存気管端々吻合を重点的に紹介する。周到な術前評価,確実な手技,適切な周術期管理により端々吻合再建は安全に施行でき,患者のQOL維持に有用であると考えられる。