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タイトル: 宍道湖におけるリンの収支に関する研究
著者: 神谷, 宏
発行日: 2009/03/19
抄録: 1983年7月1日から1984年6月30日までと2001年9月1日から2002年8月31日まで,18年を隔てて行われた1年間にわたってほぼ毎日採水した2回の観測の結果は,宍道湖流入水の7割を占める斐伊川の水質と負荷量の変化を明らかにした。この結果と流域から発生する負荷量の変遷との比較評価により以下のことが明らかとなった。 ① 18年間に、斐伊川下流部における年間平均の全窒素と硝酸態窒素濃度は上昇した。NO3-N濃度の上昇は寒候期に起きていた。他方,TPとSRP濃度は低下した。 ② 斐伊川下流部での実測によれば,TN負荷量は857ton year-1から922 ton year-1へ増加したが,TP負荷量は95.6 ton year-1から62.4 ton year-1へ約2/3に減少した。いずれも減少傾向を示した流域内でのTNとTPの発生負荷量と比べて,TNでは一致しなかったが,TPでは良く一致していた。 ③ 流域内で,寒候期のNO3-N濃度上昇と窒素のみの発生負荷量を増加させる要因は,この18年間に認められなかった。実測によるTN負荷量が増加したのは,中国大陸を起源とする大気からの窒素沈着量が増加したためと考えられた。 夏季の宍道湖において,堆積物からの栄養塩の溶出速度及び底層水中での有機物の分解に伴うアンモニア性窒素(NH4-N)と溶存反応性リン(SRP)の再生産速度を見積った。SRPと溶存マンガン(D-Mn)に関しては,表面を乱さないで採取した堆積物を用いた室内実験(現場下層水をろ過したものを連続的に供給する実験)の結果は,現場下層での栄養塩濃度の時間変化から計算された蓄積速度とがほぼ同じであった。また,これら2物質の溶出速度は相関が高く(r=0.79, p<0.01), SRPの溶出にマンガン(Ⅳ)の酸化水和物(HMO)の還元が関与している可能性が示唆された。しかし,NH4-Nに関しては室内実験の溶出速度は,現場下層での栄養塩濃度の時間変化から計算した蓄積速度17-64 mg m-2 d-1に比べてかなり小さかった。したがって,宍道湖の底層水中に蓄積する栄養塩の内,SRPはほとんどが堆積物からもたらされたものであるのに対して,NH4-Nは水中での再生産によるものが堆積物からもたらされるものより大きいと考えられた。 宍道湖の湖底堆積物からの溶存有機態リン(DOP)及びSRPの溶出フラックスを連続培養式の実験装置を用いて高水温,貧酸素条件下で測定した結果,以下のことが明らかとなった。 ① 堆積物からのSRP及びDOPの溶出フラックスが存在する。 ② DOP溶出フラックスには堆積物表層での有機物の分解に伴って溶出するもの及び堆積物間隙水中に存在するDOPが拡散輸送されるものに分けられる。 ③ 堆積物表層での有機物の分解に伴って溶出するDOP溶出フラックスは実験初期において高い。 ④ 湖水が好気的な期間に堆積物の内部から表面へ輸送されて,鉄(Ⅲ)の酸化水和物(hydrous ferric oxide:HFO)等に吸着されていたSRPが湖水の嫌気化に伴って溶出する可能性がある。 湖水に対する堆積物からのリンの負荷は,現在,貧酸素化に伴うSRPの溶出のみが取扱われており,しかも溶出過程は堆積物内部からの拡散輸送によるものとして議論されている。しかし,堆積物表面での有機物の分解に伴うDOPの放出や,間隙水中に存在するDOPの拡散輸送による水中への負荷が存在し,また,湖水の好気的な期間に堆積物の内部から拡散してきた後堆積物表層で吸着されているSRPが,湖水の嫌気化に伴って急激に溶出することを考慮する必要があることが明らかとなった。 宍道湖,中海及び中海の北側を干陸を目的に築堤を行った本庄水域において,リンの溶出速度及び沈降速度を河川水の流入量,塩分変化,湖水中のリンの現存量の変化及びリンの流入負荷を用いて計算した。年間のリン流入量に対して湖底に堆積するリンの割合は3つの水域で異なり,宍道湖で16%,本庄水域で3%,中海で-8%であった。宍道湖では沈降するリンの割合が高かった。また,実際の溶出速度は室内実験で指摘されているような温度の関数だけではなく,宍道湖及び本庄水域では10月に大きな沈降速度をもつことが明らかとなった。定常的に嫌気的な中海ではこのような現象は見られていないことから,堆積物に酸素が供給されることが原因であると考えられた。
内容記述: 環論第6号
NII JaLC DOI: info:doi/10.24795/24201o015
URI: http://usprepo.office.usp.ac.jp/dspace/handle/11355/524
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