2015 年 42 巻 1 号 p. 75-82
目的:既存の超音波診断装置を用いて発音時の舌運動の明瞭な3次元動画像を得ることは困難である.そこで,舌超音波画像のボリュームデータを基にパーソナルコンピュータ上で3次元動画像を作成する,3次元舌形状標準モデル(以下,3次元モデル)を考案し,日本語発音時の舌運動を観察することを目的に研究を開始した.本報では3次元モデルの構築方法について報告する.対象と方法:対象は34歳の女性で,安静位と日本語5母音の発音で得られる舌超音波画像を基にした.超音波診断装置上で舌尖を基準に4 mm幅の断層画像を取得し,舌表面の抽出のために変曲点を選択して制御点とした.次に,制御点を基にスプライン曲線を生成し,スプライン曲線を舌の断層画像に対応して並べることで舌の表面(スプライン曲面)を生成し,舌の3次元モデルを構築した.結果と考察:本手法により舌表面の3次元モデルの構築が可能になった.なお,制御点の選択を自動化することで3次元モデル構築時間の短縮化が図れ,多くの3次元画像を短時間で作成することができる.また,構築された3次元モデルを時系列に補間することで舌の3次元動画像が構築でき,詳細な舌運動の観察が可能になる.結論:本手法は,構音障害症例の発音時における舌運動様式の解明と臨床現場での病態説明に役立つと考えられる.