2016 年 9 巻 p. 31-41
近年、ストレスや病気を跳ね返す力であるレジリエンスが注目されており、「回復」や「抵抗」、「再構成」といった側面があることが指摘されている。本研究では、人がストレスフルな状況に耐え、そこから回復する際に生じる再構成レジリエンスによるポジティブな変容をストレス関連成長(SRG)ととらえ、そのプロセスを検討するためにPAC 分析を用いて事例研究を行った。その結果、今回の調査対象者が経験したストレス関連成長は、<責任の所在を求めて揺れ動くネガティブ感情>、<自分の気持ちを対象とした視点へのシフト>、<サポート資源を利用する力の回復>、<ストレス体験を乗り越えた後の変容>という順を追ったプロセスを経ることが明らかとなった。それぞれの段階で心理療法の治療機序との関連が見られ、ストレス関連成長のプロセスの理解が臨床実践においても役立つ可能性が示唆された。