理学療法学Supplement
Vol.46 Suppl. No.1 (第53回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: P-B-16-4
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亜急性期脳卒中者における歩行速度とMini-Balance Evaluation Systems Test、Berg Balance Scaleの関連性の比較
宮田 一弘長谷川 智岩本 紘樹海津 陽一大谷 知浩篠原 智行臼田 滋
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キーワード: 脳卒中, 歩行速度, バランス
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抄録

【はじめに・目的】

脳卒中者の歩行速度は日常生活を営む上で非常に重要な要素であり、バランス能力の関与が大きい。バランス能力の評価にはBerg Balance Scale(BBS)が広く用いられるが、いくつかの問題点も報告されている。近年、Mini-Balance Evaluation Systems Test(MB)が開発され、BBSと共に使用が推奨される評価指標とされており、今回は両評価指標と歩行速度との関連を比較し、どちらが有用か検討する。Madhavanら(2017)により慢性期では既に検討されており、本研究では亜急性期の脳卒中者を対象として行うことで、脳卒中後の時期による特性も明らかにする。

【方法】

本研究は、3病院にて理学療法を実施した脳卒中者を対象とした後方視的研究である。取り込み基準は、発症4か月以内の脳卒中者、介助なく10m以上歩行可能な者とし、94名(69.4±11.2歳、女性35名)が対象となった。評価項目は、快適歩行速度(CWS)、MB、BBSとした。

 統計解析は、ヒストグラム、歪度から尺度特性を確認した。CWSとMB、BBSの関連性を検討するため、Pearsonの積率相関係数を算出した。また、脳卒中者が地域生活を行う上での必要な歩行速度とされる0.8m/s(Perry,1995)で対象を2群に分け、群を従属変数、MB、BBSを独立変数として、Receiver operating characteristic(ROC)曲線より歩行速度予測における有用性を検討した。さらに、入退院時の2時点データが収集できた36名に対して、各評価指標の変化率を算出し、変化率についてCWSとMini-BESTest、BBSの関連性を検討するため、Pearsonの積率相関係数を算出した。統計処理には、IBM SPSS ver.24を用いて、有意水準は5%とした。

【結果】

結果はMB、BBSの順に示す。平均値±標準偏差は18.6±6.3点、49.1±12.6点、歪度は-1.03、-2.67、でありBBSに天井効果が認められた。CWSとの相関係数はMBがr=0.74、BBSがr=0.60で中等度~強い相関が認められた(p<0.01)。ROC曲線の結果、AUC、感度、特異度、カットオフ値は順にMBは0.87、80.6%、81.5%、17.5点、BBSは0.85、76.1%、74.1%、52.5点であった。変化率はCWSが0.58±1.10、MBが0.61±1.40、BBSが0.27±0.29であり、変化率におけるCWSとの相関係数はMBがr=0.59、BBSがr=0.30でMBにのみ有意な中等度の相関が認められた(p<0.01)。

【考察】

Madhavanらの慢性期脳卒中者を対象とした報告では、MBはBBSより歩行速度との関連は強く(相関係数:MB0.58、BBS0.30)、歩行速度の予測精度も高かった(AUC、感度、特異度:MB0.81、93%、64%、19点、BBS0.67、81%、56%、48点)。本結果と合わせ、病気を問わずMBの有効性が高いことが明らかになった。さらに、変化率の結果からMBは歩行速度の改善を検出できる評価指標であることが示唆され、亜急性期脳卒中者の評価への使用が推奨されると考える。

【倫理的配慮,説明と同意】

本研究は通常の臨床業務にて実施において、対象者の身体機能変化を捉えるために経時的に評価している項目のみを用いる後方視的研究のため、個人情報が特定されないように配慮した。なお、本研究は群馬大学医学部臨床研究倫理審査委員会および日高病院、日高リハビリテーション病院、公立七日市病院の倫理審査委員会にて承認を得て実施した。

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© 2019 日本理学療法士協会
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