アフリカ研究
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特集:プレザンス・アフリケーヌ研究
ダヴィッド・ジョップの〈アフリカ〉
中村 隆之
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2018 年 2018 巻 94 号 p. 61-72

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抄録

本論は,生前に一冊の詩集『杵つき』を遺して33歳で飛行機事故により他界した詩人ダヴィッド・ジョップ(1927-1960)の評伝的研究である。従来の文学研究では彼の詩の主題として,反抗,抵抗,革命,怒り,愛,ヒューマニズムなどが指摘されてきたが,彼の生と詩を相関させるとき,この詩人の中心にあったのが心象の〈アフリカ〉であったと捉えることができる。ダヴィッド・ジョップは,植民地主義や人種差別を仮借なく批判する一方,アフリカ人としての自覚を促す詩を書いた。しかし,その一貫した彼の立場には,彼自身の葛藤を認めることができる。ボルドーで生まれ,少年期・青年期の多くをフランスで過ごしたことや,フランス語で表現する詩人であることの葛藤である。彼が求め続けたものは,フランツ・ファノンのように,宗主国の支配から脱し,新たな「国民」を形成することにあった。教師として独立ギニアに赴くように,詩作だけでなく行動の人であったダヴィッド・ジョップを突き動かしたものは,未だ見ぬ〈アフリカ〉であった。

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© 2018 日本アフリカ学会
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