2019 年 22 巻 1 号 p. 17-33
本研究は,ポジショニング戦略と経営資源のような企業特殊的要因(firm-specific factors)が,チャネル構造と結合することにより,マーケティング成果に如何なる影響を与えるのかを経験的に分析したものである。従来のチャネル研究は,チャネル構造の選択およびチャネル管理行動を考察する際に,企業特殊的要因を考慮するという視点に欠けていた。また,既存研究は,チャネル行動が企業の市場成果および財務成果に与えるインパクトに関する経験的証拠の蓄積を疎かにしてきた。本研究は以上の点に着眼し,前方チャネルの統合に関する製造業者の意思決定が,当該企業のポジショニングおよび保有資源のあり方と符合して行われるのか否かが,ブランド資産の強化と財務成果の向上というマーケティング成果を規定するという分析モデルを提示し,その経験的妥当性を日本の製造企業396社から収集したサーベイデータを用いて検証する。