地質調査研究報告
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熊野酸性火成岩類の古地磁気方位
星 博幸
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2002 年 53 巻 1 号 p. 43-50

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抄録

中新統熊野酸性火成岩類(約14.3Ma)の試料を8地点、から採取し,残留磁化を測定した.段階交流および熱消磁により,多くの試片から2つの残留磁化成分(高温または高保磁力成分と低温または低保磁力成分)が分離された.高温または高保磁力成分の試片特徴磁化方位から4つの地点、平均特徴磁化方位が決定された.神ノ木流紋岩(本火成岩類下部の流紋岩溶岩流)は正帯磁の東偏磁化を持ち,本火成岩類中部および下部の溶結凝灰岩および花崗斑岩はSW向きで伏角が深い逆帯磁磁化を持つ.これらの方位特徴は基本的に過去の研究(田上,1982) で報告された特徴と同じである.この時計まわり方向に偏向した方位は,これまで西南日本の時計まわり回転運動を表すものと考えられてきた.しかし,15Maには西南日本の回転は終了していたとする古地磁気学的な証拠が多くあるため,本研究はこの偏向を非テクトニックな原因,すなわち磁場逆転またはエクスカーションの間の普段とは異なる磁場状態の中で獲得された磁化と解釈する.また,溶結凝灰岩と花崗斑岩の古地磁気方位と室生火砕流堆積物(約14.3Ma)の方位にみられる類似は, これらのユニットが成図的に関連していることを示唆する.

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© 2002 産業技術総合研究所 地質調査総合センター
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