地理学論集
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論文
釧路市における自主防災組織の活動から見た津波避難の課題
仁平 尊明橋本 雄一
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2015 年 90 巻 1 号 p. 1-14

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抄録

東日本大震災(2011年)の後に修正された津波浸水の新想定によると,北海道東部太平洋岸に位置する釧路市では,約13万人が津波想定地域内に居住すると推計される。その値は釧路市の人口の約7割に達し,北海道内の市町村では最も多くなる。さらに釧路市の市街地は,海岸に面する上に河川と鉄道に囲まれており,津波避難に不利な条件にある。本研究では,自主防災組織の防災活動に注目することから,釧路市における津波避難の課題を解明することを目的とする。現地での聞き取り調査では,自主防災組織であり,複数の町内会にまたがる広域的な範囲で避難訓練を実施してきた連合防災推進協議会の活動を重視した。それ以外に,連合町内会,町内会,市役所への聞き取り調査も実施した。それらの資料を分析した結果,避難施設(学校,公共機関,避難マンション)までの距離と経路,自動車による交通渋滞,道路が凍結する場所と時期,地域住民の高齢化と住民同士の繋がりなどを考慮した避難訓練が有効であることが示された。一方,高齢化によって自主防災組織の担い手が不足していることや「津波撤退ルール」が住民に認識されていないことなどの課題も示された。今後,冬季の津波避難を想定した訓練を重ねることや,外気に晒されない避難施設の確保も必要である。

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