日本鼻科学会会誌
Online ISSN : 1883-7077
Print ISSN : 0910-9153
ISSN-L : 0910-9153
原著
IgG4関連疾患と思われた難治性慢性副鼻腔炎の2症例
谷口 賢新郎太田 康蛭田 啓之北村 真鈴木 光也
著者情報
ジャーナル フリー

2019 年 58 巻 4 号 p. 719-724

詳細
抄録

Immunoglobrin G4(IgG4)関連疾患に関しては不明な点が多い。今回,IgG4が関連すると思われた難治性の慢性副鼻腔炎の2症例を経験したので報告する。

症例1:47歳男性。アレルギー性鼻炎で鼻閉,鼻漏,後鼻漏症状を認めていたが,鼻症状の悪化や咳嗽が出現し,当科受診。鼻腔内に鼻茸はなく,CTで副鼻腔に軟部組織陰影を認め,血中好酸球3.7%,Japanese Epidemiological Survey of Refractory Eosinophilic Chronic Rhinosinusitis (JESREC) Score 7点,血清IgG4は306mg/dLと高値であった。内視鏡下鼻副鼻腔手術を施行し,副鼻腔粘膜の病理組織標本で,多数の形質細胞浸潤や線維化病変,多数のIgG4陽性細胞を認めた。術後鼻閉症状は改善し,鼻副鼻腔の内視鏡所見の増悪はないが,後鼻漏,咳嗽が残存しており,現在も経過観察中である。

症例2:73歳男性。副鼻腔炎の治療をしていたが,鼻閉,鼻漏症状が増悪し当科受診。気管支喘息の治療中であった。鼻腔内に鼻茸はなかったが,著明な鼻漏,後鼻漏を認め,副鼻腔CTでも軟部組織陰影を認め,血中好酸球は5.9%でJESREC Score 11点と,好酸球性副鼻腔炎が疑われた。手術検体の病理組織標本では,好酸球の浸潤は乏しく,免疫染色で多数のIgG4陽性細胞を認め,血清IgG4 211mg/dLと高値を認めた。鼻閉症状は改善したが,後鼻漏,咳嗽症状は遷延し,現在も経過観察中である。

2症例ともIgG4関連疾患の包括的診断基準を満たした。また,特徴的な症状として,持続する鼻漏・後鼻漏が認められた。

著者関連情報
© 2019 日本鼻科学会
前の記事
feedback
Top