総合健診
Online ISSN : 1884-4103
Print ISSN : 1347-0086
ISSN-L : 1347-0086
原著
特定保健指導の効果評価と対照設定の方法に関する研究
岡山 明奥田 奈賀子中村 幸志三浦 克之安村 誠司坂田 清美日高 秀樹岡村 智教西村 邦宏
著者情報
ジャーナル オープンアクセス

2014 年 41 巻 3 号 p. 418-427

詳細
抄録

【目的】特定健診結果を用いて特定保健指導の指導効果を明らかにするには、指導を行った群と比較可能な対照の設定が重要である。通常は特定保健指導に参加しなかった者を対照とするが生活習慣や意欲が異なっている可能性がある。そこで本研究では傾向性スコアを用いた対照群設定の意義を検討する。また傾向性スコアに基づいた対照を簡単な手順で設定できる方法を開発する。
【方法】保険者の協力を得て収集した特定健診・特定保健指導結果データセットから平成20年度に積極的支援に階層化された対象者のうち翌年の特定健診結果がありかつ22の標準問診票について全て回答した者を抽出して分析対象とした(33,009名)。特定保健指導結果があり1回以上の支援記録がある者を支援あり(1,114名)とし、それ以外を支援なし(31,895名)と分類した。支援あり群と支援なし群で平成20年度の健診成績および翌年の検査成績との差を比較した。対照は全ての支援なし群を用いる方法、ロジスティック回帰分析による傾向性スコアで選定する方法、線形回帰分析により選定する方法の3つを用いた。
【結果】支援なし群全体を対照群として比較すると、支援あり群は問診結果において、喫煙率、朝食を取らない習慣が有意に低く(すべてP<0.001)、保健指導への意欲は有意に高かった(P<0.001)。翌年の検査成績では両群ともに腹囲・体重減少が観察されたが、支援あり群の方が有意に大きかった(P<0.001)。支援により翌年の最大、最小血圧、脂質、肝機能検査に有意な改善が見られた。傾向性スコアに基づき設定した対照群を用いると平成20年度の成績の差は少なくなった。翌年との差は腹囲、体重、最大血圧、およびHDLコレステロールで支援あり群で有意に改善したが支援なし群全体を対照とした場合より小さかった。
【結論】特定保健指導の効果分析で非参加者全体を対照と設定するのは不適切であり、本論文で示した方法など特性の類似した対照を選択する必要があると考えられた。

著者関連情報
© 2014 一般社団法人 日本総合健診医学会
前の記事 次の記事
feedback
Top