日本放射線技術学会雑誌
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臨床技術
64列MDCTを使用した小児冠動脈描出について
吉浦 貴之 舛田 隆則佐藤 友保菊原 由香利小林 由枝石橋 徹奥 貴行吉田 理人船間 芳憲
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2022 年 78 巻 8 号 p. 856-863

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抄録

【目的】64列multi detector computed tomography(MDCT)を使用し,小児冠動脈(coronary computed tomography angiography: CCTA)画像を後ろ向きに心電図同期,心電図非同期に分け評価し,冠動脈の描出率について検討したので報告する.【方法】2015年1月から2019年3月の期間にCT angiography検査を行った3歳以下の小児100例を後ろ向きに登録した.心電図同期撮影で検査を施行した50例を同期撮影群,心電図非同期撮影で検査を施行した50例を非同期撮影群とし,2群に振り分けた.CT装置は64列MDCT装置(Light speed VCT)を使用した(管電圧:80 kV,管電流:50–300 mA自動管電流制御機構使用,noise index:40,スライス厚:0.625 mm,回転時間:0.4 s/rotation,ピッチファクタ:0.24(同期撮影群),1.375(非同期撮影群)).心電図同期はretrospective法を使用した.被ばく線量を比較するため,コンソールに表示されるCT volume dose index (CTDIvol), dose length product(DLP)を記録した.各症例の冠動脈curved planer reconstruction(CPR)像の視覚評価を小児循環器専門医2名の医師にて3段階にスコア化し,その特徴を検討した.【結果】同期撮影群でのCTDIvol, DLP(中央値(最小値–最大値)はそれぞれ,6.74 (1.05–11.97) mGyおよび79.87 (15.90–146.65) mGy·cmであった.非同期撮影群においてはそれぞれ0.51 (0.39–0.95) mGyおよび8.15 (6.30–17.50) mGy·cmであり,有意に非同期群のほうが低い値となった(p<0.05).同期撮影群での冠動脈起始部および末梢部の描出率は,右冠動脈88%および54%,左前下行枝84%および58%,左回旋枝66%および30%であった.非同期撮影群では,それぞれ右冠動脈52%および0%,左前下行枝56%および0%,左回旋枝32%および0%となり,同期撮影群は非同期撮影群よりも有意に描出率が高い結果となった(p<0.05).【結語】64列MDCTにおいて,小児冠動脈の描出率を小児CCTA検査において心電図非同期撮影と心電図同期撮影での冠動脈の描出率を明確にした.小児冠動脈における正確な診断を行ううえでは,心電図同期撮影を行うべきである.

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© 2022 公益社団法人日本放射線技術学会
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