青森県産ヒノキアスナロ材(青森ヒバ)から水蒸気蒸留で得られたヒバ精油を, 木材表面処理用の防腐防蟻剤として活用するために, 精油内の防腐防蟻成分(ヒノキチオール等)の揮散性や光分解性の抑止策として, 精油中に金属イオンの導入を試みた。
その際, 金属塩を溶解させた水溶液とヒバ精油を攪拌することで, ヒバ精油内に金属イオンのみを移行させることができたが, 金属によって移行した量は異なった。今回試みた中でヒバ精油への移行量がもっとも多かったのが銅で, 次いで鉄, 亜鉛の順であった。
次に, 金属を含有させたヒバ精油の防腐性能を評価するために, JIS K 1571に準じた室内防腐性能試験を行った。腐朽による木材試験体の質量減少率を3%以下にするには, ヒバ精油をそのままで使用した場合, 処理溶液中にトロポロン類が1. 2%以上必要であった。しかし, 銅を含有させた場合には0. 4%で防腐性能基準を満たした。この銅含有ヒバ精油は, 防蟻効力も有し, 鉄腐食性や吸湿性についても性能基準を満たした。