日本泌尿器科學會雑誌
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爆薬をもちいた体外腎結石破砕水中衝撃波の生体に及ぼす影響
黒須 清一庵谷 尚正神部 広一景山 鎮一桑原 正明丹羽 隆高山 和喜
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1987 年 78 巻 7 号 p. 1252-1259

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抄録

微小爆発によって発生する水中衝撃波の生体に及ぼす影響を, 犬を用いて検討した. 無処置犬 (9頭) あるいは実験的腎結石犬 (8頭) を, 衝撃波発生装置内に入れ, 10mgのアジ化鉛を起爆させた. これによって20回ないし500回の衝撃波を, 腎結石または静脈性腎盂造影によって描出された腎盂にあてた. つぎにこの犬を, 実験直後 (急性犬) ないし3カ月後 (慢性犬) に屠殺し, 組織学的 (光顕) に検討した. まず急性犬では, 1) すべての犬において, 衝撃波をあてた腎の尿細管腔内に赤血球を認め, 一部の peritubular capillary および糸球体周囲には出血を認めた. その程度は, 衝撃波の数が増えるのに従い高度となった. 2) 衝撃波を500回あてた犬のうちの1頭ではごく一部の糸球体に出血を認め, 膵頭部および腸間膜の一部にも出血を認めた. 3) すべての犬において, 衝撃波をあてた側の肺下端部に出血を認め, その程度は, 衝撃波の数が増えるのに従い高度となった. 4) その他の臓器には, 特記すべき所見を認めなかった. つぎに慢性犬では, 1) すべての犬において, 急性犬でみられたような腎の出血は消失していた. しかし衝撃波を500回あてた犬の腎では, ごく一部の糸球体に線維化像を認めた. 2) 衝撃波の数が20回で結石破砕が不十分であった結石犬では, 破砕された結石の一部が尿管につまり, 水腎性萎縮腎の像を呈していた. 3) すべての犬の肺では, 一部に増殖性変化を伴って出血が全て消失していた. 4) 膵および腸間膜を含めその他の臓器には, 特記すべき所見は認めなかった.
今回の実験結果から, 衝撃波が生体に及ぼす影響の主たるものは, 臓器の出血と考えられた. しかし腎においては, ごく一部の糸球体に線維化を残すものの, 出血はすべて吸収されており, 重篤な障害を残すものではないと考えられた. ただし, 破砕された結石が尿管を閉塞しそれが遷延すると, 腎に悪影響を及ぼすので, こうした場合には速やかに排石をはかるべきであると思われた. また, 肺においては, 一部に増殖性変化を認めるものの, さほど重篤な障害ではないと考えられた. 一方, 膵および腸間膜にも出血を認めたが, これは実験中に犬が動きこれらの臓器に focusing した可能性が否定できず, 臨床応用にあたっては, 厳密な位置あわせが重要であると思われた.

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© 社団法人 日本泌尿器科学会
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